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カテゴリー: wine

中国ワインの最前線を日本語で伝える専門メディアDrinkChina!!のワイン記事一覧。張裕(チャンユー)・長城ワインなど大手から、小屋発酵所・楽為(ルーウェイ)・Gloriville・詩百篇など注目ワイナリーまで幅広くカバー。中国ナチュラルワインの動向、RAW WINEなど国際イベントレポート、四川料理・中国料理とのペアリング実践まで、産地を超えて深く掘り下げます。

  • #035.【海外ニュース解説】ビジネスジェット誌が見た中国ワイン——「戦利品」から「物語」へ、黄金世代のコレクターたち

    #035.【海外ニュース解説】ビジネスジェット誌が見た中国ワイン——「戦利品」から「物語」へ、黄金世代のコレクターたち

    出典:Bombardier Experience Magazine|Janet Z Wang
    https://bombardier.com/en/magazine/experience/chinese-wine-coming-age

    ▼ポイント(編集部まとめ

    ・ ビジネスジェット機メーカー・ボンバルディアのライフスタイル誌が中国ワイン特集。富裕層向け媒体がこのテーマを取り上げること自体、中国ワインのポジショニング変化を象徴している

    • 中国の富裕層ワインコレクターに2つの潮流:①香港・シンガポールの華僑名家による「成熟したセラーの世代継承」、②本土の自己成功型起業家(30〜40代前半)による「知識と体験としてのワイン収集」

    • Christie’s香港の2025年データでは、グレーターチャイナからの新規購入者の69%がミレニアル世代以下

    • 67 Pall Mall香港での最も成功したワインリストは「中国ワイン」——シャンパンやピノ・ノワールのテーマリストを上回る売上を記録

    • 2026年末、上海・徐匯区の築100年フランス・ルネサンス様式邸宅に67 Pall Mall本土初出店予定

    ▼DrinkChina!!コメント

    この記事の出典がボンバルディア——プライベートジェットメーカーの雑誌だ、という事実から読み始めたい。

    その読者層は世界を飛び回る超富裕層だ。そこに「中国ワインの成熟」が特集として載る。これはワインの話ではなく、ラグジュアリーの地政学の話でもある。

    記事が描く世代交代の構図が鮮明だ。「ラフィットを千ケース買った時代」から、「ヴィンテージを研究し、産地を訪れ、マスタークラスに通う時代」へ。消費の動機が「見せること」から「知ること」に移行した。これは成熟の典型的な軌跡であり、欧米のワイン文化が100年かけて辿った道を、中国は一世代で駆け抜けようとしている。

    「コレクティングはもはやトロフィーのためではない。過去を敬いながら、明日のレガシーに投資すること」——コレクターのJason Yeungのこの言葉が核心を突いている。そして彼がその文脈で名指しするのが、新疆・吐魯番のPuchang Vineyard✳︎だ。中国固有の品種にこだわるブティック産地。その存在が「中国ワインの物語の最初の章」として語られる。

    DrinkChina!!が追っている「飲養一体」と「発見型の消費」は、まさにこの文脈と重なる。ワインを「知識のインフラ」として捉える新世代が育つとき、そこに必要なのは評点でも産地の格付けでもなく、物語と文脈だ。

    中国ワインはいま、その物語を書き始めている。

    ✳︎Puchang Vineyard(蒲昌葡萄园)

    新疆・吐魯番盆地と天山山脈に挟まれたゴビ砂漠のオアシスに位置する67ヘクタールのワイナリー。  1975年に最初の植樹が行われた中国最古級の商業畑のひとつで、2008年に香港人実業家K.K. Cheungが購入。 ワインを一口飲んで「新疆の可能性」に確信したことが購入の動機だったと伝わっています。

    品種へのこだわりが際立っている

    シルクロードの品種であるRkatsiteli(グルジア系白品種)やSaperavi(グルジア系赤品種)、さらにPIWI(病害耐性交配)品種のRoudingxiangやBeichunを主軸に据える。 カベルネ・ソーヴィニヨンはブレンドの5%に過ぎない——これは中国ワイン界では極めて異例です。

    テロワールが特殊

    北緯41〜43度、ボルドーやブルゴーニュと同緯度。天山山脈の雪解け水を古代から続く地下水路「カレーズ」で引き込み灌漑。 砂漠気候のため害虫がほぼ生存できず、ECOCERT認証のオーガニック農法を実践。 

    中国ワイン界での位置づけ

    Ao Yun(雲南)やLong Dai(山東)がフランス資本の高級路線であるのに対し、Puchang は香港人オーナー×シルクロード固有品種×オーガニックという、まったく異なる軸で「中国ワインのアイデンティティ」を模索している存在です。ボンバルディア誌のコレクター記事で「明日のレガシー」として名指しされたのは、その哲学が評価されているからでしょう。

  • #034.【海外ニュース解説】韓国メディアが見た中国ワインの「今」——「可能性」から「完成度」へ

    #034.【海外ニュース解説】韓国メディアが見た中国ワインの「今」——「可能性」から「完成度」へ

    出典:The Chosun Daily(朝鮮日報英語版)|2026年6月3日
    https://www.chosun.com/english/special-en/2026/06/03/X3MTGMM5BBC6LGL4FXF3PLWIHQ/

    ▼ポイント(編集部まとめ)

    ・ 韓国・朝鮮日報が中国ワインの台頭を特集。「数年前まで物珍しさの対象だったが、いまやグローバル市場に挑戦する新興勢力」と位置づけ


    • 中国は2016年に生産量11.5億リットルで世界6位を記録。現在も世界トップ10を維持する主要産地


    • WSCWAでテイスティングした韓国人ソムリエの評価:「以前は可能性を感じる段階だったが、今回は完成度が明らかに上がっている」


    • 寧夏のカベルネ・ソーヴィニヨンベースの赤ブレンドが「安定感の高さ」で評価。雲南の「香格里拉聖酒(シャングリラ・セイクリッド・レッド)」はテンションと長い余韻でプレミアムワインの方向性を示すと称賛


    • 課題として「中国ワインへの根強い先入観」と「高価格を正当化する説得力の不足」を指摘

    ▼DrinkChina!!コメント

    この記事が興味深いのは、評価の主体が「韓国人ソムリエ」である点だ。

    中国ワインを語るのが中国人や欧米の専門家ではなく、隣国・韓国の視点であること。地理的・文化的に近く、しかしワイン文化では独自の成熟を遂げてきた韓国からの評価は、ある種の「第三者性」を持つ。その韓国人ソムリエが「完成度が上がった」と言う重みは小さくない。

    「可能性から完成度へ」——この一言がいまの中国ワインを最も端的に表していると思う。DWWAでのBest in Show獲得、WSCWAでの甘口白ワイン最高賞、トランプ晩餐会での採用。これらは偶然の重なりではなく、品質が閾値を超えたことへの必然的な反応だ。

    記事が指摘する「高価格を正当化する説得力の不足」は正直な課題だ。ボルドーには数百年の物語がある。中国ワインにはまだそれがない。しかし物語は、作られるものでもある。寧夏・雲南・懐来——それぞれの産地が固有の地形・気候・哲学を持ち始めているいま、その物語の素材は揃いつつある。

    DrinkChina!!がやるべきことは、まさにその物語を日本語で積み上げることだ。

  • #033.【海外ニュース解説】世界のワイン業界が探している若い飲み手は、中国にいた——35歳以下・女性・感覚で選ぶ

    #033.【海外ニュース解説】世界のワイン業界が探している若い飲み手は、中国にいた——35歳以下・女性・感覚で選ぶ

    出典:Vino Joy News|Natalie Wang|2026年5月29日
    https://vino-joy.com/2026/05/29/the-young-wine-drinkers-the-industry-cant-find-theyre-in-china/

    ポイント(編集部まとめ)

    ・ 米国・欧州でワイン離れが進む若年層だが、中国では逆に若年・女性層が主要消費者に。Tmall大手ワインショップ「小皮(Xiao Pi)」では5年前に50%だった40歳以上の比率が、現在は70%が40歳以下に逆転
    • SommCat(侍酒猫)のユーザーの75〜80%が女性、約50%が25〜35歳。美団傘下の即時配送プラットフォーム「外賣(Waima)」では約70%が45歳以下、そのうち約半数が18〜25歳
    • 購買動機は「技術的知識」より「気分・雰囲気・自己表現」。「なぜこのワインを選んだか」への答えは「感覚(feeling)で」
    • キーフレーズは「説人話(shuō rén huà)」——人間の言葉で話す。業界用語でなく、日常の感覚に届く言葉で伝えること

    ▼DrinkChina!!コメント

    「なぜこのワインを選んだか」——「感覚で」。

    この答えは一見ナイーブに見えるが、じつは非常に正直だと思う。ワインに限らず、消費の多くは「感覚」で動いている。それを「知識」や「産地」や「評点」で覆い隠してきたのが、従来のワイン業界だったのかもしれない。

    中国の若い消費者がワインに「過去の記憶がない」ことを、Xiao Piはアドバンテージと言う。ボルドーへの敬意も、ソムリエへの畏れも、「大人の飲み物」という刷り込みもない。だからこそ、自分の感覚で選べる。これは文化的な空白ではなく、自由だ。

    「説人話」という言葉が刺さる。ワインを難しくしてきた業界に向けた、シンプルな批判でもある。産地・品種・ヴィンテージ・評点——それらは情報であって、感情ではない。若い消費者が求めているのは「このワインで、どんな夜を過ごせるか」という物語だ。

    これはDrinkChina!!が「飲養一体」として追っていることと地続きだ。飲み物を「スペック」ではなく「場面と身体と感覚」で語ること。それが中国の若い消費者がすでに実践していることだとすれば、私たちがやるべきことは明確になる。